Story 01
道路が変われば、社会も変わる。
植物由来素材で
“街の当たり前”をつくり直す
――今、取り組んでいるプロジェクトについて教えてください。
道路補修に使われる「アスファルト再生用添加剤」を、石油由来から 植物由来へ置き換える研究に取り組んでいます。私たちが開発しているのは バイオマス比率98%以上の添加剤で、国の標準規格もすべて満たしており、石油系添加剤の完全代替が可能です。アスファルトは道路や駐車場、歩道といった街の基盤を支える存在です。
植物由来素材への転換そのものが、CO2排出量の削減といった環境負荷低減につながる一方で、独自の反応設計によりアスファルトの劣化を抑制できる可能性を秘めている点も当社試作品の大きな特徴です。現在は室内での促進劣化試験においてその効果を確認していますが、今後は実道路での検証を通じて舗装の長寿命化や補修頻度の削減を確かなものにすることを目指しています。これが実現すれば、将来的に行政コストの圧縮や渋滞緩和といった社会全体への大きな波及効果も期待できると考えています。
――植物由来素材を用いた今回の取り組みは、街や社会にどのような価値をもたらすのでしょうか。
今回の試作品では、植物由来素材を用いながらも、少ない添加量でアスファルトを効率よく再生できる点が大きな特長です。劣化の抑制も期待でき、施工時の臭気が少ない点は、現場作業員や近隣住民への配慮にもつながります。さらに、バイオマス比率の高さという環境価値に加え、当社試作品が目指す「舗装の長寿命化」が実現することで、環境負荷を大幅に低減できる可能性があります。素材単体の性能ではなく、「街の持続性」まで含めて価値を生み出せる点が、この研究の面白さだと感じています。
Story 02
裁量が増えれば、
見える景色も変わる!
研究が“社会と結びつく”瞬間
――このプロジェクトの現在の進捗と、ご自身の役割について教えてください。
このプロジェクトは私の入社前から約6年続く取り組みで、私はそのうちの5年間を担当しています。2年前に主担当を任されてからは、大学・国立研究機関・社内の各部署・道路会社といった多様なステークホルダーの“窓口”として議論をリードする役割を担うようになりました。立場が変わると、研究が社会にどのような影響を与えるのか、産官学の中で自分たちがどの位置にいるのかが一気に見えるようになります。すでに完了している特許出願や学会発表は、そうした調整と検証を何度も重ねた末にようやく到達できた成果であり、「素材の可能性を社会に問う」ための大きな一歩だと感じています。
――これまでの5年間で、印象に残っている出来事はありますか。
アスファルト再生用添加剤の設計では、従来から先輩方が行ってきた複数の工程がありました。一方、ある工程については「そもそもこの工程は必要なのか」「別の視点で捉えたほうが本質的な性能が得られるのではないか」とも感じていました。机上の試験だけでは測りきれない部分があるのではないかと考え、思い切って設計工程の見直しを提案しました。
――どのように設計工程を見直していったのですか。
製造現場での具体的な条件や負荷を踏まえて設計工程を再整理したところ、「別の工程で同じ性能を十分に発揮できる」という結論に辿り着き、結果として1つの工程を省くことができました。この削減は単なる“作業の効率化”ではありません。工程が減ることで、製造に必要な時間やコスト、管理項目が整理され、生産性の向上につながります。結果として、当社工場での製造のハードルが下がり、将来的な社会実装に向けた検討や採用判断が進めやすくなるでしょう。道路会社や自治体にとっても導入判断がしやすくなり、植物由来の材料を社会に広げるスピードがますます加速していくのです。
――若手であっても、自ら判断できる環境があるのですね。
はい、大いにあります。自分の考えを持ち、仮説を立て、検証し、その結果を先輩や他部署、共同研究先と議論する。そうしたプロセスを任せてもらえたからこそ、新しい見方に気づくことができました。「研究は素材を作るだけではなく、社会で使われる形にして届けることまで含めて研究なのだ」と実感できた出来事でしたね。
Story 03
素材の可能性を拡張するために…
“次のステージ”を見据えて、
歩き出す
――今後、研究成果を社会実装していくうえで、どんな展開を考えていますか。
この素材の実用化に向けては「価格」と「用途の広がり」が課題です。設計工程の見直しでコストは一定改善しましたが、石油系添加剤より割高なのが現状。より広い用途を見据えた開発が必要です。
一方で、技術面の成果は着実に進んでいます。特許出願を済ませ、2件の学会発表や展示会出展、業界紙での掲載もすでに実現しています。当社工場での補修施工にも使用し、現場レベルでの性能検証も進行中です。サンプルワークや学会では前向きな声をいただく一方、社外現場での検証数が今後の焦点です。将来的には、通常は再利用できないアスファルトや改質剤入りの特殊アスファルトへの適用にも挑戦するほか、社外での実証も本格化させ、社会実装へ一歩ずつ進めていく予定です。
――ハリマ化成で、これから挑戦していきたいことはありますか。
将来的にはロジンの可能性をもっと拡張できるような研究にも着手していきたいですね。ロジンは、まだ誰も着目していない分野に応用できる可能性を秘めています。与えられたテーマに取り組むだけでなく、社会の課題から自分でテーマを立てられる研究者でありたいと思っています。
――最後に、学生の皆さんに向けてハリマ化成の魅力を教えてください。
ハリマ化成は、当社の規模感だからこそ味わえる“自分で動かす面白さ”があります。研究・企画・検証・発信まで、一連の流れを自分の手で進められる環境があり、部署を超えて相談できる風土も根付いています。“自分で考えて動きたい人”には、まさに最適な環境です。視野を広げながら、社会と密接につながる自由な研究ができるのがハリマ化成の面白さだと思います。